大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和28年(う)38号 判決

記録によれば、原判決は、「被告人は、昭和二十七年五月二十五日施行された高岡市長の選挙に際し、候補者堀健治をして当選を得しむる目的の下に、いづれも供与又は交付されるものであることの情を知りながら〔第一〕茂住茂太郎より、右堀健治のため、投票取りまとめ方を依頼され、其の報酬等として、同年五月十三日頃及び同月十七日頃の二回に亘り、合計金弐万円の供与を受け、〔第二〕茂住茂太郎より、右堀健治のため、選挙運動者に対し、投票取りまとめの報酬等として供与され度い旨依頼され、其の資金として、同月二十二日頃金壱万円の交付を受けたものである。」旨事実を認定した上、被告人に対し、金弐万円を追徴する旨言渡したものであることが明白である。然るに、原審証拠調の結果、殊に、被告人に対する検察官作成第一回乃至第五回各供述調書の記載によれば、被告人は茂住茂太郎より昭和二十七年五月十三日頃金五千円、同月十七日頃金壱万五千円、合計金二万円の現金を受領し、自己所有の他の金員と混淆することなく、其の儘これを自己の手許に保管し置き、同月十七日頃手塚宇三治郎に対し金壱万円を、同月十八日頃柴田正に対し金弐千円を同月二十一日頃柴田正に対し金五千円を、いづれも投票取りまとめ方の報酬として該金員中よりそれぞれ手交したものであつたこと、並に、被告人は茂住茂太郎より同月二十二日頃金壱万円を受領し、即日受領の現場に於て、これをそのまま平島慶一に対し、同様の趣旨で手交したものであつたこと、すなわち被告人の手許に利益として残存したものは、金参千円に過ぎなかつたことを肯認するに十分である。尤も、敍上被告人に対する検察官作成第一回供述調書中に、被告人が茂住より受領した金員中金八千円はこれを自己の用途に費消した旨の供述記載が存することを認め得るけれども、右は、柴田正に対し、金五千円の供与を為した事実を黙否して居た当時の供述であつて、その後該供述は変更されたものであることが記録上明白であるから、前記供述調書中の記載は、敍上の如き認定をなすについて、毫も妨げとなるものでない。思うに公職選挙法第二百二十四条後段の追徴に関する規定は、収受又は交付を受けた利益の残存するものを追徴する趣旨に解すべきであつて、いやしくも利益の残存しない場合、なお、其の価額を追徴すべきであると解すべきでない。蓋し、若し然らずと解せんか、供与行為が同一利益について数回反覆されるに伴い、追徴もまた同一価額について数回重複して行われるに至り、追徴制度の本旨を遙かに逸脱する結果を招くことが明かであるからである。この法理は、利益受領の趣旨が、これをもつて選挙運動に対する報酬たらしめるにあると投票取まとめ方勧誘の資金たらしめるにあるとによつて、些かもその結論を異にするものではない。そうして見れば、被告人に対し、金弐万円を追徴する旨言渡した原判決は、事実を誤認したものでなければ、法令の適用を誤つたものであり、その誤りは判決に影響するから、論旨は理由があり、原判決は爾余の論旨について判断する迄もなく、破棄を免れないものである。

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